第1回 逆転のお話

 逆転のお話をしたいと思います。すみません。連載の第1回なのに,いきなり本題かよ,という突っ込みがありそうですけど,連載のタイトルが「ゆるゆる時間(たいむ)」ということで,自己紹介や意気込みなどはとりあえず置いておき,今日は逆転のお話をしたいと思います。

 編集者のKさんから「先生は横浜ベイスターズのファンでしたよね。東京ドームのチケットが,8月なんですけどあります。けっこういい席です。いかがですか」と声をかけてもらったのが,たしか今年の4月だったと思います。我がベイスターズの8月といえば(残念ながらかなりの確率で)消化試合になっている危険があります。ましてや,オレンジ色に染まる東京ドームのジャイアンツ戦となればですね,だいたい負けるんですよ,これが。だから負けそうだな……と思いながらも,ファンとしては応援しないわけにはいきませんので,喜んでチケットをいただくことにしました。

 ところが今年(2015年)の我がベイスターズは,ご存知のとおり(ご存知でないかもしれませんが),快進撃を果たしてですね,交流戦前には(交流戦というのはセ・リーグとパ・リーグが戦う試合です),なんと最大貯金11で(勝ちが負けより11も多いという奇跡ですね),「単独首位」をキープし続けました(本当に奇跡でした)。そのあと交流戦では,得意の(ベイスターズのみなさん,すみません)大型連敗(12連敗でした)をしたものの,オールスター前の前半戦を終えた時点では,セ・リーグの「単独首位」に立っていたんです,我がベイスターズが(うおおお)。

 わたしは思いました。「この8月13日の東京ドームのチケットって,もしかしたら首位攻防戦になるのではないか」と。でもそんな淡い期待は(本当に淡い期待でした),後半戦に入ると,あっという間に崩れました(大丈夫です。ベイスターズファンはこんなことには慣れています)。

 そしてこのジャイアンツ戦を観戦するために東京ドームを訪れたとき,我がベイスターズは,セ・リーグ単独5位(下から2番目です),自力優勝はすでに消滅,そして得意の連敗(4連敗)中でした。

 しかし生で観るのは違います。楽しみに球場に入ってみると,確かに(本当に!)とても,よい席でした。バックネット裏で,我がベイスターズの筒香選手,梶谷選手はじめ,ジャイアンツの村田選手(元ベイスターズです),高橋由伸選手,長野選手,坂本選手など豪華な顔ぶれ(有名な選手はジャイアンツの方が多いですね)を,まのあたりでみることができます。アップにして写メもたくさん撮りました(動画も撮りました)。

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 しかし試合の展開はというと,我がベイスターズは9回の最後の攻撃を迎えた時点で,わずか2安打,そして無得点です。0-2でジャイアンツのエース菅野投手に完全に抑えられていました。おとなりのベイスターズファンのご夫妻(だと思います。お二人とも我がベイスターズの帽子とユニフォームを着用してオレンジ色の周囲から浮いていました)も「2安打じゃなあ」とぼやいています。

 しかしわたしはですね,今年のゴールデンウイークにナゴヤドーム(中日ドラゴンズ戦)に我がベイスターズの応援に行ったときも,じつは9回まで3安打で無得点だったのに(しかも2アウトランナーなしで,あと一人コールまでされたところからです),見事な逆転勝ちを決めた試合をみていたのです。

 まあ,そのような奇跡はそう起こるものではないよ,と思われるかもしれませんが,2013年の夏にも,1-8で負けていた我がベイスターズが大逆転して勝った試合を,わたしは神宮球場でみているんです(ちょっと自慢です)。どの球場もハマスタ(本拠地の横浜スタジアム)ではありません。つまりアウェイの試合で,大逆転試合をみる機会が多いんですね。

 ベイスターズファンの後輩弁護士から「木山先生もっていますね」といわれることもあるのですが,秘訣を公開しますと,「逆転」による勝利は,我がベイスターズと一体となって祈りながら応援することから起きるのです(ほんとかなあ)。

 この日はどのように祈ったかといいますと,「お願いします。夏休みの思い出にしたいので,逆転してください。5月のナゴヤドームの再来をお願いします。逆転勝ちをみたいのです。お願いします。このまま2安打無得点では,あまりにさみしいです」。ここまで,まず祈りました。とここで,待てよ,あまり多くを望んではいけないな,と思いました。それで「わかりました。もう今年は,あとは負けてもいいです。とにかく今日だけでいいので我がベイスターズを勝たせてあげてください。お願いします。わたしがみているこの試合だけでいいので勝たせてあげてください」。信仰があるわけではありませんが,わたしは強い願望を抱いたときは,このように(とても)都合のよいお祈りをします。

 お祈りがかなったのか,応援が通じたのか(おとなしくみられますが,わたしは球場に行くとかなり大声で応援しますので,一緒に初めて野球観戦に来た人にたいてい驚かれるのですが,9回はオレンジ色にそまるアウェイのドームで,大声で応援をしました),なんと我がベイスターズ,ほんとうに逆転しました!!!

 やったーーーーーー!!!!!

 9回表に,なんと梶谷選手のタイムリーと,筒香選手の逆転2ランで大逆転し,9回裏は「小さな大魔神」と呼ばれている抑えのエース(新人です)山﨑投手が抑えて,3-2で勝ちました!

 初回からただの野球の話かよ,と思われたかもしれません。たしかにただの野球の話なんですけど(まずったかなあ),けっこう祈ることって大事だと思っているんです。強引にこじつけるわけではないのですけど,たとえば司法試験。

 わたしは司法試験に4回目の受験で合格したのですけど(旧司法試験です),4回目の受験のときは父からもらった四つ葉のクローバーを鞄にしたためて,試験の前にはそれを握りしめて「グッドラックの神様,わたしを合格させてください。お願いします。絶対に合格させてください。わたしだけを合格させてください」なんて祈ったものです(3回目の受験まではそんなことはしていませんでした。実力があれば受かると自信過剰気味でしたが,実力に加えて運もなければ受からないと考えるに至ったのです)。

 それから少し自己紹介になりますが,わたし,本を(単著だけで)41冊書いています(ようやく自己紹介!)。それから,これもまた自己紹介になりますが,現在41歳で,年齢と書いた本の数が並んでいます(どうでもいい情報ですね)。

 それでやはり,発売した以上,本は売れた方がいいです。だから,本を発売して,あとは運任せ,とかにするんじゃなくて,「お願いします。どうかこの本が売れますように。ランキングに入りますように。お願いします。10万部突破,お願いします」なんてお祈りするんです。

 で,なに? という感じで終わりそうになっていますが(大丈夫かなあ),逆転ってかっこいいですよね。わたしは逆転が好きです。逆転って,きっと祈りですよ。祈りというのは,強い願望ですね。強い願望を心のなかにぶつける。行動にぶつける。その結果,形勢逆転が起きるのだと思います!

 みなさんも,逆転したいと思うときがきっとこれからあると思います。それは何かの試合や勝負事かもしれませんし,試験かもしれませんし,人生そのものかもしれません。

 そんなときは,ぜひ,この話を思い出していただければと思います。えっ?

 では,また次回お会いしましょうー。

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